地磯だが足場は広くて安全 呼子・灘海岸

みなさんは「恋人の聖地」をご存じですか?

プロポーズにふさわしいデートスポットを全国から選りすぐり、指定しているのです。佐賀県からは大興善寺と浜野浦の棚田が選ばれています。

そして、そのサテライト(予備軍)として波戸岬が選ばれました。夕日が美しい波戸岬は確かに恋人の聖地と呼ばれるのにふさわしいスポットです。

しかし、釣り場としても魅力のあるエリアです。波戸岬ではゴトウ瀬がよく知られていますが、これから紹介する灘海岸も釣りが楽しめます。

目次

●波戸岬は一大観光地

波戸(はど)岬は東松浦半島の北端に位置し、海中展望塔や海水浴場、キャンプ場、国民宿舎などがあり、観光地としてよく知られています。

サザエの壷焼きが名物の売店も立ち並び、行楽シーズンには大勢の観光客が訪れます。

この波戸岬の東側は加部島に面し、波戸漁港もあり、比較的穏やかな海岸線を見せています。

対して、西側は冬季の季節風にともなう荒波のため浸食され、荒々しい磯が連続しています。

この一帯は灘(なだ)崎、または灘海岸と呼ばれていて、探索歩道(遊歩道)が設けられており、行楽客が楽しめるようになっています。

浸食された海岸の特徴として足元から深く、各種の魚が釣れています。

グレ、チヌをはじめとして、ヤズ(ブリの幼魚)やサワラなどの青物やマダイ、バリ(アイゴ)、アジ、それにアオリイカやコウイカ、ササイカなどが楽しめます。

●大きく分けて釣り場は3か所

出典:筆者

地図を見ていただければわかるように、灘海岸の釣り場は大きくみっつに分けられます。

北から上ノ瀬、中ノ瀬、下ノ瀬と呼ばれており、それぞれの釣り場によって駐車スペースが異なります。

上ノ瀬や中ノ瀬を目指すなら夕日の広場駐車場、下ノ瀬はキャンプ場駐車場を利用します。

釣り場の近くまでは探勝歩道を通ればいいのでアクセスに苦労することはありません。

ただ、歩く距離が少ないところほど人気が高く、特に小アジのシーズンは釣り人が集中するのは仕方のないことです。

撮影:筆者
キャンプ場の駐車場は広いのですが、好シーズンの休日は
これがほぼ満車になってしまいます。

条件はいずれも似たようなもので、水深や潮通しはほとんど差はありません。実際に釣りをしてみて、お気に入りのポイントを探しましょう。

●足場はよくても磯釣りは磯釣り

撮影:筆者
地形はさまざまですが、灘海岸はこのような地磯が長く続いています。
自分が釣りやすい場所を探してください。

平坦でいくら足場がいいといっても磯であることに変わりはありません。

特に、冬季は北西の季節風がまともに吹き付けることが多く、大波を被る可能性があります。

釣れているという情報が入ったとしても、風や波によっては快適な釣りが楽しめないことがしばしばあります。

そういう場合は潔く諦め、安全な釣り場に変更しましょう。

また、磯が濡れているとスニーカーでは滑って転倒・転落する怖れがあります。

スパイク、もしくはフェルト底の磯靴を使用し、ライフジャケットを着用してください。

磯釣りではしばしば使われる警句があります。「決して海に背を向けるな!」です。これを忘れないようにしてください。

●10月末に下ノ瀬へ

撮影:筆者
灘海岸にはおおむねこのような探索歩道が設置されています。磯のすぐ近くまでは
キャリーが使えますから、道具を運ぶのはそれほど苦にならないでしょう。

酷暑の夏が過ぎ去り、ようやく過ごしやすくなった10月末、下ノ瀬へグレ釣りに出かけました。

日曜日とあって、前日から来ていたキャンパーたちのクルマが駐車場にはたくさん停められています。

なんとか空きスペースを見つけて道具を下ろし、探索歩道を通って釣り場を目指します。

少しは水温が下がっているだろうから、久しぶりにグレの顔を見たくなったのです。刺身や塩焼きも食べてみたくなっていました。

15分ほど歩いてなじみの釣座に到着しました。

足場はあまりよくないのですが、ほかの釣り人が来ることはめったにありません。それでいて潮通しはいいのです。

3kgのオキアミ2角と集魚材を混ぜてコマセを作ります。

足もとの海面に撒くとすぐにエサ盗りが集まってきました。ンー、これは最近釣り人が入っている証拠です。あまり芳しくありません。

久しくコマセが入ってなければエサ盗りは少なく、それだけ釣りやすいのです。

潮は上げ五分というところでしょうか。もう3時間もすれば満潮で、その前後が期待できる時間帯です。

流れの方向は右。ゆったりと動いています。足もとにコマセを集中し、仕掛けを遠投します。ウキ下は5mです。

着水した仕掛けに1杯だけコマセを被せてアタリを待ちます。

●バリ、バリ、バリ

ウキが小さく変化しました。しかし、それっきり。仕掛けを巻き取ってみるとサシエがありません。

同じところに投入します。今度はウキが沈みました。ワンテンポ送らせてアワセ。ヒット!

魚は必死に潜ろうとしています。が、抵抗はそこまで。それほど大きくはないようです。魚が浮いてきました。狙い通りのグレです。

サイズは30㎝を少し切る程度。俗にいう足の裏クラスです。ハリを外してキープします。

撮影:筆者
尾鉢(尾ビレの付け根)が細い魚は抵抗が強く、同じサイズのグレやチヌの何倍もよく引きます。最後の最後まで抵抗しますから、引きを楽しむには面白い魚です。

ところが、グレのアタリはそれっきりで、その後ヒットするのはバリ、バリ、バリ。

この魚の標準和名はアイゴですが、九州北部ではバリという呼び名で知られています。

抵抗が強く釣りをする分には楽しめるのですが、アンモニア臭が強く、おまけにトゲには毒があるという厄介な魚です。

身自体は白身で締まっており、臭いをうまく処理すれば美味しい魚ではあります。

釣り上げたらすぐに毒トゲを切り落として、内臓を出してしまえばかなり臭いは解消されるのですが、連続してヒットすれぱその処理に追われてグレ釣りをするヒマがなくなってしまいます。

どうやらバリの群れに囲まれたらしく、グレは追いやられてしまったようです。この日は諦めて納竿しました。

●まとめ

撮影:筆者
ゴミは釣り人が多い釣り場にはつきものです。
せめて自分の出したゴミだけは持ち帰ってください。

みなさんはバリを食べたことはありますか?

前述したように内臓と皮に強いアンモニアの臭いがあり、敏感な人には嫌われています。

しかし、釣り上げた直後にうまく処理すればあまり気にならなくなり、刺身や洗い、煮付け、一夜干し、ホイル焼きにしても美味しく食べることができます。

また、夏の産卵期に釣り上げたバリは真子や白子を持っていて、これも珍味として人気があります。

機会があればぜひ挑戦してみてください。

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