ヘラブナ釣りで用いられるヘラウキの種類は実に豊富です。状況に応じて適切なヘラウキを見極めることが好釣果のカギであり、ヘラブナ釣りの奥深さを象徴する要素の一つでもあります。この記事では、ヘラウキの選び方のポイントと、初心者向けのおすすめのヘラウキをご紹介します。
ヘラブナ釣りにおけるヘラウキの重要性は 非常に高い
ヘラウキは水中の状況を把握するためのセンサー
通常のウキ釣りでは、ウキはアタリを取ることと、水の流れを捉えることとの2つの役割のみを担っているアイテムです。しかしながら、ヘラブナ釣りにおけるヘラウキは、エサ、ターゲットであるヘラブナ、仕掛けに関する水中のあらゆる状況を把握するためのセンサーとしての役割を担う重要なアイテムです。
熟練した釣り人は、ウキの動きを見るだけで、最適なアプローチ方法を素早く組み立てることができるため、ベテランのヘラ師がヘラウキ選びに異常にこだわる理由は、そこにあるのです。
ヘラウキの選び方で 釣果に雲泥の差が生じる
ヘラブナ釣りは、その時点での水中での状況に対して、エサ、仕掛け、タナ、釣り場といったあらゆる要素全てがベストマッチしていないと釣果が得られません。特に野釣りでは、”どれか一つがわずかに合っていないだけで、一匹も釣れない”ということも珍しくありません。ですから、水中でどんなことが起こっているのかを的確に把握することは、非常に肝心なのです。
とはいえ、釣り人自らが水中に潜って状況を観察することは不可能であるため、ヘラウキがセンサーとしての役割を果たします。ですから、このヘラウキの選び方で、釣果に雲泥の差が生じてくるのです。
ヘラウキの選び方のポイントを解説!
ヘラウキの基礎的な知識を各要素ごとに紹介
ヘラウキの選び方は、それだけで一冊の本が作れてしまうほど奥深いものです。
ここでは、ヘラブナ釣りの経験が浅い方向けに、ヘラウキに関する基礎的な知識を3つの要素に分けて紹介しながら、選び方のポイントについてできる限り分かりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
※ 注意
- この記事では、ヘラウキのボディーの部分と足の部分とを合わせて、”ボディー”と定義しています。
- この記事では、直接ハリ掛かりへとつながるウキの動きと、直接ハリ掛かりへはつながらない動き (ヘラブナの動きによってウキに生じる動き)とを合わせて、”アタリ”と定義しています。
>>> 次のページでは トップの素材ごとの長所と短所とを解説
ヘラウキの選び方のポイント① トップの素材
ヘラウキのトップの素材の分類には、素材自体による分類と内部構造による分類とがあるため、注意が必要です。素材自体による分類においては、ポリカーボネート (以下PC)と、PCをガラス繊維で固めたものとに分類されます。内部構造による分類においては、内部が空洞になっている”パイプ”と、内部が空洞になっていない”ムク”とがあります。
パイプトップはPCのみですが、ムクトップについては、単に”ムク”と呼ばれる、PCをガラス繊維で固めた素材で作られているタイプと、”PCムク”と呼ばれる、ガラス繊維を使っていないPC単体で作られているタイプとがあります。
ここでは、それぞれの長所と短所とを解説していきます。
トップの素材1. パイプトップ
パイプトップ: 長所
パイプトップはその名の通り、内部が空洞になっているため、浮力があります。そのため、重いエサを使用する場合に重宝されます。また、なじみ幅が狭くなるため、狭いタナの範囲に狙いを絞ることができ、放流量が多い釣り場でのウワズリ防止や、集まるヘラブナを縦方向に分散させにくくしたい場面において有効です。
加えて、浮力がある故に太く作ることが容易なため、”視認性が良いのも長所“と言えるでしょう。特に、湖などの規模の大きい釣り場では、使用する竿が長くなることや、大きなエサが使われることなどから、ほぼパイプトップ一択となります。太くできれば、短くても一定のなじみ幅を維持することが可能なので、浅ダナ用の短いウキでは、パイプトップが採用されています。
パイプトップ: 短所
パイプトップの持つ浮力は、アタリに対する感度の面では短所となります。ヘラブナの活性が非常に低いコンディションでは、アタリの小ささはかなりのものになるため、パイプトップで取るのはほぼ無理です。特に、トップの大部分が水の上に出ている状態では、浮力が非常に大きくなっているため、ハリに残っているエサが残りわずかになっている終盤の場面でのアタリに対する感度は、一層悪くなってしまいます。
また、なじみ幅が狭いため、両ダンゴ釣りにおいて、なじんでいく過程で出るアタリでアワセるスタイルの釣り方で用いることも不可能です。
トップの素材2. ムクトップ
ムクトップ: 長所
ムクトップは、内部が空洞になっていない構造のため、浮力が全くありません。また、ガラス繊維で固められている故に重さも重く、トップ単体で水に放り込むと、どんどん沈んでいってしまいます。必然的に、ウキの浮力はボディーの浮力のみとなり、ボディーの浮力のみでトップを支えて立つ形となります。この特徴は、アタリに対する感度においてはプラスであり、極小のアタリでもかなりハッキリと捉えることが可能です。
また、ウキ全体の浮力が小さくなる分、なじみ幅も広くなります。なじむ過程の時間が長くなり、エサの落下時の動きも大きくなるため、なじんでいく過程で出るアタリでアワセるスタイルの釣り方にも適しています。
ムクトップ: 短所
浮力がないムクトップは、重いエサや重い仕掛けを背負うことが困難です。大きなバラケエサを付けるセット釣りや、比重の重いエサを使う場面には不向きでしょう。また、浮力がない分、”なじみ幅を確保するために、トップの長さをある程度長くしなければならない”というデメリットもあり、短いウキで使われることはあまりありません。
ムクトップのヘラウキは、なじみ切った後に浮き上がろうとすると力が弱いため、セット釣りにおいて、”アタリが今一つカチッと決まらない”ということも、筆者もよく経験しています。
トップの素材3. PCムクトップ
PCムクトップ: 長所
前述した通り、PCムクトップは、ガラス繊維を使っていないPC単体で作られているムクトップです。PCにガラス繊維を混ぜると強度が向上しますが、”その分重くなる”という側面もあります。PCムクトップは、ガラス繊維が含まれていないために軽く、同じボディーを持つヘラウキで比較すると、ムクトップよりもウキ全体の浮力は大きくなります。ただし、浮力を持っていないことには変わりなく、トップ単体で水に放り込むと、ゆっくりと沈んでいきます。
ムクトップの感度の良さをある程度維持しつつ、多少重いエサや重い仕掛けでも背負えるようにしたい場面で、この特徴は大いにメリットとなります。また、重さが軽い分、”長く作っても、ウキ全体の浮力に影響を与えにくい点も長所”と言えます。
PCムクトップ: 短所
ムクトップの感度の良さは、ガラス繊維によって重さが増大している点によるところが大きく、ガラス繊維を含まないPCムクトップは、やはり感度の良さがイマイチです。確かに、パイプトップに比べれば感度は高いですが、それでも、ラインにヘラブナの体が触れた際のトップの動きを比較した場合でも、やはりPCムクトップは動きが控えめな印象です。
ウキ全体の浮力についても、ムクトップよりは浮き上がりがいいものの、パイプトップと比べると全く及びません。中途半端な特徴故に、”初心者では使いこなすのが難しい”と考えることもできるため、中途半端な特徴を持つヘラウキの必要性が認識できる程度まで上達してから、購入を検討するのも悪くはありません。
ヘラウキの選び方のポイント② 長さ
ヘラウキは、長さもまちまちです。長いものでは、50cmを超えるような超大型のヘラウキもあれば、15cmにも満たないヘラウキもあります。
ここでは、長いヘラウキと短いヘラウキ双方の長所と短所とについて見ていきます。なお、ここで解説している内容はすべて、ボディーとトップとの長さの比率が同じになっているヘラウキの場合についての内容です。
ヘラウキの長さ1. 長いタイプ
長いヘラウキ: 長所
長いヘラウキは通常、トップの長さも必然的に長くなることが多いため、なじみ幅を広く確保することが可能です。そのため、”大きなエサを付けて深くなじませるスタイルの釣り方や、なじんでいく過程で出るアタリでアワセるスタイルの釣り方に最適“と言えるでしょう。
特に、浮力を持たないムクトップの場合は、なじみ幅を確保するために、ある程度トップを長くする形になります。パイプトップの場合は、長くすればするほど浮力が大きくなりますので、高浮力のヘラウキを使いたい場面では、長くて太いパイプトップを持つヘラウキがベストな選択肢となります。
長いヘラウキ: 短所
“なじみ幅が広い”ということは、見方を変えると、”ヘラブナが寄るタナが広がりやすい“ということ意味しています。ヘラブナが寄っている層が広がると、アタリが縦方向に広い範囲で出てしまい、狙いが定まらなくなったり、ベストなタナでアタリが出なくなったりする恐れがあります。深くなじみ込ませるスタイルで使う形になる長いヘラウキは、放流量が多い釣り場では、マイナス面が際立つことも少なくありません。
また、長いヘラウキは風による影響も受けやすく、風が少し強くなっただけで、まるで使い物にならなくなります。
ヘラウキの長さ2. 短いタイプ
短いヘラウキ: 長所
短いヘラウキの長所は何と言っても、”速攻型のスタイルの釣り方に向いている“という点です。なじみ幅が狭く、ピンポイントに狙いを定められる点はもちろんのこと、立ってからなじみ切るまでの一連の動作が素早いため、浅ダナ両ダンゴ釣りのように、テンポ良くヘラブナを拾っていくスタイルの釣り方にはもってこいなのです。夏場の管理釣り場における浅ダナ両ダンゴ釣りでは特に、ウワズリ気味の状況で素早くアタリを出していくことになるため、必然的に、18cm前後の短いヘラウキ一択となるでしょう。
また、風が強い日にも、短いヘラウキは、水の上に出ているトップの長さが短くなるため、重宝されます。
短いヘラウキ: 短所
短いヘラウキはなじみ幅が狭くなるため、ある程度なじませないと成立しないスタイルの釣り方には不向きです。セット釣りで短いヘラウキが用いられるケースもありますが、そういった場合には、強い浮力でなじみ幅をある程度確保できる太いパイプトップが使われているヘラウキを選択したり、比重が軽いバラケエサを使うようにしたりする工夫は不可欠です。
当然、浮力のないムクトップが使われているヘラウキについては、短いものは使いづらく、エサ落ち目盛りをウキの肩に近い場所に設定して使う必要があるなど、初心者にはおすすめできません。
ヘラウキの選び方のポイント③ ボディーとトップとの長さの比率
ヘラウキの特徴を決定付ける要素には、ボディーとトップとの長さの比率もあります。釣り関連のメディアではあまり紹介されない分野ですが、実際には非常に重要性が高く、これを考慮せずにヘラウキ選びをすると、その他の要素に関する知識が全くいかせなくなってしまいます。
ここでは、身近に販売されているヘラウキにおいて採用例の多い、3種類の比率それぞれの特徴を解説していきます。
長さの比率1. ボディーとトップとが同じ
ボディーとトップとが同じ比率のヘラウキは、採用例が最も多く、ヘラウキの基本となる比率です。立ち方、なじみ方、アタリの表れ方のすべてにおいて平均的な特徴を持っており、”オールマイティー性が非常に高い“と評価できます。
初心者の場合は、まずは、この比率のヘラウキを使ってヘラブナ釣りの基礎を身に着け、自分の使っているヘラウキに対する不満や疑問が出てくるようになったら、その時点で初めて、他の比率のヘラウキを使ってみるようにすれば、最短で上達できるでしょう。実際のヘラブナ釣りでは、さまざまなコンディションに直面することになりますが、70%くらいのコンディションパターンは、この比率のヘラウキで十分釣りを組み立てることができます。
長さの比率2. ボディーよりもトップの方が若干短い
ボディーよりもトップの方が若干短い比率が採用されているヘラウキは、一定のトップの長さを確保できる長めのものがほとんどです。ボディーとトップとの長さの比率に関係なく、ボディーが長いヘラウキはもともと、“水中での安定性が高い“という特徴がありますが、トップが短いことによって、安定性はさらに向上します。このため、流れが早い釣り場や風が強い日において非常に使いやすく、他の比率のヘラウキでは斜めになってしまうような場合でも、この比率のヘラウキは、最大限垂直の姿勢を保つことが可能なのです。
ただし、ボディーががっしりと腰を据えて安定する特徴故に、アタリに対する感度が若干悪化してしまう点は否めません。特に、斜めや横へ動くようなアタリを取るのは苦手です。
長さの比率3. ボディーよりもトップの方が長い
ボディーよりもトップの方が長いヘラウキは、前述した、ボディーよりもトップの方が若干短い比率のヘラウキとは逆の比率ですので、水中での安定性は当然劣っています。ところが、安定性がない分、ちょっとした姿勢変化に敏感であり、まだトップがなじんでいない段階でのウキの動きもハッキリと表れます。
特に、なじんでいく過程で出るアタリでアワセるスタイルの釣り方においては、斜めや横へ引っ張られるような動きでアワセることもよくあるため、低い安定性がもたらす感度の高さは長所なのです。この釣り方ではなくても、ウキのわずかな変化を敏感に捉える必要がある場合には、この比率はまさに最適です。
とはいえ、水の流れや風に対して非常に弱いのは、言うまでもありません。
>>> 次のページでは 初心者向けのおすすめヘラウキをご紹介
初心者向けのおすすめのヘラウキをご紹介!
上級者であれば、一本数千円のヘラウキをバラで買うことも良いですが、初心者の場合は、長さの異なる数本のセットで手ごろな価格で販売されているヘラウキを選ぶのがおすすめです。セットで販売されているヘラウキは、”全体的な特徴はそのままに、長さのみが異なる”というセット内容になっているため、ヘラウキの持つ基本的な特性を理解するうえで非常に良い教材でしょう。
ここでは、ヘラブナ釣りの経験が浅い初心者にぜひともおすすめしたい、4種類のヘラウキをご紹介します。
初心者向けのヘラウキ: おすすめ①
浅ダナでの釣りを中心に使用される短いヘラウキです。足の部分が長いタイプのヘラウキのため、仕掛けの沈下途中の早い段階から立ち始めますので、浅ダナでテンポの速い釣りが展開される場面で非常に使いやすいヘラウキに仕上がっています。セットの3本それぞれの長さはそれほど大きく変わらないため、”特徴が大きく異なる3タイプのセット”というよりは、折れてしまったりなくしてしまったりした際のスペアとして考えるのがいいでしょう。
初心者向けのヘラウキ: おすすめ②
野釣りで使用される最もオーソドックスなタイプのヘラウキです。それぞれ2cmごとに長さの異なる24cm~32cmの5本セットとなっており、守備範囲の広いセット内容となっている点が初心者には魅力的です。これと言って特筆すべき特徴があるヘラウキではありませんが、その分初心者でも基本に立った使い方ができますので、ヘラブナ釣り入門時に最初に買うヘラウキセットとしても最適です。筆者もこのヘラウキで、底釣りのセット釣りの基本を学ぶことができました。
初心者向けのヘラウキ: おすすめ③
ムクトップのヘラウキで、7本セットになっているものです。ボディーよりもトップの方が長さが長い比率のタイプであるため、縦にスパッと入るタイプのアタリではないアタリの表れ方が良好で、なじんでいく過程で出るアタリでアワセるスタイルの釣り方にもってこいのヘラウキです。最も長いものは、トップの長さが22cmありますので、ウキの肩の部分にエサ落ち目盛りを設定すれば、トップの長さである22cmをまるまるなじみ幅として確保する使い方が可能です。
初心者向けのヘラウキ: おすすめ④
PCムクトップのヘラウキの中でも、比較的さまざまな釣り方での守備範囲が広いヘラウキです。ヘラブナの活性が低く、渋いアタリで拾っていかないと数が伸びない状況でのセット釣りでは、アタリに対する感度の犠牲を抑えつつ、一定の浮力を確保できるPCムクトップのヘラウキは、大きな武器となります。とはいえ、ムクトップに含まれているガラス繊維がないPC単体素材である故、低価格をウリにしているものは強度面で不安が残るため、このグレードのものを選択しておくのが無難です。
ヘラウキ選びを極めよう!
ヘラウキの選び方には、さまざまな要素が複雑に関係しており、その全てを理解することは、容易なことではありません。この記事で取り上げた内容は氷山の一角ですが、ここで取り上げた基礎知識を基に、ヘラウキに関する理解を深めていけば、ヘラブナ釣りの奥深さをより一層味わうことができるでしょう。
まずは、前述したおすすめのヘラウキをそろえ、徹底的に使い込むことで経験を積んだうえで、少しずつヘラウキ選びを極めていけるようにステップアップしていっていただけたら幸いです。