「延べ竿」は、リールを装着せずに使用する竿で、竿の長さと同じ長さ分のラインで作られた仕掛けを竿先に結んで使います。この記事では、リール竿に隠れがちな存在である延べ竿のメリットとデメリットから、使える釣り方、選び方のポイント、おすすめ製品まで徹底解説します。
そもそも「延べ竿」とは?
「延べ竿」は、リールを装着することなく、竿単体のみで釣りができる仕組みの竿です。
リール竿は、リールシートにリールを装着し、リールのスプールに巻かれたラインを竿のガイドリングに通した後、ラインの先端に仕掛け本体 (仕掛け全体のうち、道糸やメインラインを除いた部分)を結んで使用します。一方、延べ竿はリールは使わず、「蛇口」と呼ばれる竿の先端部に仕掛けを結んで使用します。蛇口は、樹脂製の竿本体の先端部にレーヨンを編み込んだ糸である「リリアン糸」が接合されているものがほとんどです。大物釣り用の延べ竿ではリリアン糸ではなく、仕掛けを直接結び付けることができる金属製のパーツが竿本体の先端部に装着されているケースもあります。
リールを使わない仕組み故、延べ竿で用いることができる仕掛け全体の長さは基本的に、最長でも竿の長さと同程度となります。
延べ竿のメリットとデメリットとを解説!
延べ竿は、リール竿を比較するとメリットとデメリットとの両方があり、それを理解したうえで、どちらのタイプの竿を使うのが良いのかを判断することが重要です。ここでは、リール竿を比較した場合における延べ竿のメリットとデメリットとを、それぞれ4つずつ取り上げて解説していきます。
延べ竿: メリット
延べ竿のメリット1. 仕掛けの作り方や仕組みが簡単
リール竿での仕掛け作りの過程ではミスを犯しやすい作業が多数存在しており、ミスをしたら仕掛け作りを大幅にやり直す必要があります。
代表的な例では、全てのガイドリングにラインが通っていなかったり、ベールを倒した状態で、リールのラインローラーにラインが掛かっていなかったりするなどが挙げられ、上級者でもうっかりやってしまいがちです。
対する延べ竿は、蛇口にラインを結び、竿を伸ばして必要な長さのラインを確保し、ラインの先端に仕掛け本体を結べば完了であり、釣り初心者にも分かりやすく、簡単な作業で済みます。また、釣り場に付く前に事前に仕掛けを作っておき、仕掛け巻きに巻いて保管しておけば、釣り場では、蛇口に仕掛けを結ぶだけの作業で済ませることも可能です。
また、”最長でも仕掛けの長さ分の水深での使用に限定された仕掛けを用いる”という特性上 (詳細は後述)、仕掛けの仕組みが単純である点も長所で、仕掛けの種類によっては、使われる仕掛けアイテムの個数が半分以下で済む場合もあります。ですから、仕掛け作りや仕掛けアイテムの役割に関する理解が浅い釣り初心者には、延べ竿の仕掛けはもってこいなのです。
延べ竿のメリット2. 釣り場への持ち運びが容易
言うまでもありませんが、リール竿は竿単体では使えず、必ずリールが必要になります。当然、釣り場には両方を持参しなければならず、荷物が増えることになりますし、リールは機械のため、乱暴な持ち運び方をすると損傷して動作に支障をきたす可能性もあり、慎重に運ばなくてはなりません。その点、延べ竿であればリールが不要な分、荷物を減らすことができますし、運び方が多少手荒でも竿だけなら実際の釣りに悪影響が出るような損傷の心配はほとんどありません。
延べ竿のメリット3. 仕掛けの操作を直感的に行える
延べ竿の仕掛けは、仕掛けの長さが固定されているため、竿の動きと仕掛けの動きとが常に連動します。そのため、”実際の釣りでは、竿先を上げると仕掛けが上に上がり、竿先を下げると仕掛けが下に沈む”というように、仕掛けの操作を直感的に行うことができます。リール竿の場合だと、竿の操作方法以外に、リールの操作方法も仕掛けの動きに影響を及ぼす要素となるため仕掛けの操作が複雑になり、意のままに仕掛けを操るには技量を必要とします。
ただ、仕掛けの長さと水深との差が極端に大きいまたは極端に小さいフィールドでは、延べ竿の方が仕掛けの操作が複雑になる場合もあるため、仕掛けの操作が”全般的に簡単”という意味ではありません。
延べ竿のメリット4. 魚の引きをダイレクトに楽しめる
リール竿は短くて硬いため, 魚の引きが不自然で面白みに欠ける
リール竿は仕組み上、リールに巻かれたラインの長さの範囲内であれば、どんなに深い水深でも対応できるため、磯竿などの例外を除き、基本的には取り回しの良さを重視し、2~3mの長さになっています。短いロッドで一定のサイズの魚とやり取りしようとすると、魚の引きを受け止めるブランクスそのものの長さが短い分、パワーを確保するために硬さをある程度硬くしなければなりません。
短く、硬い竿で魚とやり取りすると、手元に伝わってくる魚の引きが不自然なものになってしまい、高反発なカーボン素材を使用している竿では特にガツガツとした不愉快な引きになってしまいます。また、竿の短さや硬さによるラインへの負担を軽減するために、必要に応じて、ドラグでパワーを消費させながらのやり取りになり、魚の生命感が100%竿に伝わってこないため”ストレートで直感的なファイト”という点で面白みに欠けます。
延べ竿は長くて柔らかいため, 直感的なやり取りが味わえる
延べ竿は、ヘラブナ釣りなどの例外を除き、水深やポイントまでの距離に合わせて長さを選ぶため、最短でも4m前後、長いものでは10mを超えるものもあります。そのため、魚の引きを受け止めるブランクスの長さを長く確保でき、硬くすることでパワーを持たせる必要性が薄くなります。また、リールが付いていないため、ドラグによるパワー消費も行えませんので、結果的に竿本来のパワーのみで魚に対峙することになります。
長く、柔らかい竿で魚とやり取りすると、竿全体が弧を描くように美しく曲がり、竿全体で魚の引きを受け止めていなす形になりますので、魚が弱るまでに時間は掛かるものの、不自然さのない直感的なやり取りが味わえます。また、延べ竿は、ラインが竿に直接結び付けられているため、ラインから送られてくる魚の生命感がダイレクトに竿に伝達されますので、竿を使わない手釣りに近いような感覚を楽しむことができるのが魅力でしょう。
延べ竿: デメリット
延べ竿のデメリット1. 対応できるフィールドに限界がある
前述した通り、延べ竿で用いることができる仕掛けの長さには限りがあり、水面から釣り座までの高さが比較的高いフィールドであっても、最長で竿の長さプラス30cmが限界です。そのため、水深が深いフィールドで、仕掛けを深く沈めて行う釣り方には対応しにくいのです。本流釣りや友釣りで使われる延べ竿の中には、10m以上の長さのものも一応存在はしていますが、多くの場合は特定の釣り方での使用のみが想定されている延べ竿であるため、他の釣り方では使い勝手が悪いです。5.4mを超える延べ竿の操作は、釣り初心者には到底できません。
また、詳細については後述しますが、リールを使わない故に仕掛けを遠方に投げることが困難であるため、魚がいるポイントが仕掛けの長さよりも遠いフィールドにおいても、延べ竿は使用不可能です。一本の竿でなるべく多くのフィールドに対応させたいのであれば、延べ竿は不向きなのです。
延べ竿のデメリット2. 取り回しに難がある
リール竿は、水深やポイントまでの距離を考慮して、対応できる長さを確保する必要が基本的にないため、特別な理由がない限りは3m以下の長さの竿で事足ります。短い竿は取り回しが良く、釣り入門者でも扱いやすいでしょう。
一方延べ竿は、竿の長さによって対応できるフィールドが決まるため、そのフィールドに適合するリール竿の長さと比較すると、2倍以上の長さが必要になることがほとんどです。
長い竿は、やり取りは自然で面白いものの、取り回しが非常に悪くて扱いにくいのが難点です。また、少しでも扱いやすくするために重さの軽い延べ竿を選ぼうとすると、選択できる延べ竿が絞られ、価格も大幅に上がってしまう問題もあります。
延べ竿のデメリット3. 太いラインが必要になる場合がある
前述したように、リール竿における魚とのファイトでは、ドラグを用いたパワー消費が可能です。ドラグはラインブレイクの危険性が高まるレベルの負荷が掛かった場合にのみ、連続的に一定のパワーでブレーキを掛けながらラインを自動で出してくれるため、ラインブレイクを回避しつつ魚を短時間で効率的に弱らせることが可能です。魚とのやり取りにおけるドラグの有効性は非常に高く、バスゲームのレコードを見ても分かるように、慎重にやり取りできる状況であれば、ラインクラスの1.5倍以上の重さの魚でも上げられてしまうのです。
延べ竿はリールがなく、ドラグの有効性は一切いかせないため、竿のパワーのみに頼ったファイトを強いられることになり、ラインへの負担は非常に大きくなってしまいます。竿は、ある一定のレベル以上に曲げられてしまうと、反発力が極端に大きくなってクッション性が失われていくため、ラインブレイクの危険性が高まります。ですから、大物を相手にする釣り方においては、リール竿よりも太いラインを使わないと切れてしまう場合が少なくありません。前述した、”ダイレクトなやり取りが楽しめる”という長所は、ラインへの負担がそれだけ大きいことの裏返しなのです。
延べ竿のデメリット4. 仕掛けを遠方に投げられない
延べ竿の仕掛けが届く範囲は、仕掛けの長さ分の範囲に限られます。例えば、4.5mの延べ竿で竿と同じ長さの仕掛けを用いる場合、理論上は9m先まで仕掛けが届く計算になりますが、実際の釣りでは、仕掛け全体の長さのうち、水中に沈む部分の長さと、竿先から水面までの高さ分の長さとを考慮する必要がありますし、竿は斜め下の角度で構えることになる点も計算に入れなければなりません。仮にウキ釣りの場合で、水中に沈む長さが2m、竿先から水面までの高さ分の長さが50cm、竿を構える角度が45°とすると、釣り座から水平方向に3m程度先までの範囲が限界です。
当然、竿の長さと仕掛けの長さとを足した長さよりもさらに遠方に仕掛けを届けることは不可能です。よって、仕掛けを遠方に投げる必要がある釣り方では、延べ竿は使えません。
延べ竿が使える釣り方は?
“延べ竿は、小物狙いの川釣りでしか使えない”と考えている方は大勢いますが、実は延べ竿が使える釣り方は数多くあります。ここでは、延べ竿が使える4種類の釣り方をご紹介します。
延べ竿が使える釣り方1. ウキ釣り
ウキ釣りは、延べ竿が使える釣り方の代表的存在です。特に、長いハリスが用いられる種類のウキ釣りの場合、短い竿で長いハリスは扱いにくく、延べ竿ならではの長さが長所となります。
淡水のフィールドでは、ほぼ全ての種類のウキ釣りで延べ竿が使われるほか、海水のフィールドにおいても、堤防や港湾岸壁から20cm前後の魚を狙うウキ釣り全般に使用可能です。海水のフィールドにおけるウキ釣りでは、基本的に磯竿が主役ですが、磯竿はガイドリングの数が多く、柔らかくて折れやすいなど、釣り入門者が扱うにはハードルが高過ぎる竿ですので、5m前後の延べ竿で狙うタナに十分に届くフィールドであれば、ぜひとも延べ竿を活用したいものです。
延べ竿が使える釣り方2. サビキ釣り
サビキ釣りをする釣り人の90%以上は、リール竿を使用していますが、狙うタナが5m程度の深さまでであれば、延べ竿も問題なく使用可能です。
サビキ釣りに延べ竿を使うメリットとして、”現時点で仕掛けがあるタナを理解しやすい”という点が挙げられます。タナは、サビキ釣りで好釣果を得るうえで非常に重要な要素ですが、リール竿の場合、リールからラインを出して仕掛けを沈めていくため、仕掛けが今どのタナにあるのかを正確に把握するのが非常に困難であり、毎投常に同じタナに仕掛けを送り届けるには、相当な慣れが必要です。延べ竿であれば、竿の角度によって仕掛けのタナが決まるため、釣り初心者でも狙ったタナに正確に仕掛けを送り届けることができるのです。
延べ竿が使える釣り方3. ミャク釣り
ミャク釣りは、延べ竿のみで行われる釣り方で、エサ釣りでの渓流釣りはもちろんのこと、海水のフィールドにおいても、メバルやカサゴなどの小型の根魚を狙う場合に非常に有効です。ミャク釣りでは、最短でも4.5m以上の長い延べ竿が用いられますが、海でのミャク釣りにおいては、中層に浮いている時間帯のメバルなどを狙う場合は、3m台の延べ竿の方が使い勝手が良いこともあります。
延べ竿が使える釣り方4. 友釣り
友釣りは、言わずと知れた延べ竿専門の釣り方です。カーボンの登場と技術発達とにより、従来は取り扱いが困難だった8mを超える竿もごく一般的になっており、大規模な本流域での友釣りでは、11mという驚異的な長さの竿も使用されるようになっています。ただ、友釣り用のアユ竿は、オトリアユを竿で操りやすくするために、極端な先調子で設計されているものも少なくなく、他の釣り方への流用にはあまり向きません。
延べ竿の選び方のポイントは?
延べ竿の種類は多岐にわたる
延べ竿の種類は多岐にわたりますが、一般的な釣り方で使われる延べ竿として、ヘラブナ釣り用の「ヘラ竿」、渓流釣り用の「渓流竿」、汎用タイプの「万能竿」、友釣り用の「アユ竿」の4種類が挙げられるでしょう。
ヘラ竿は、魚を素早く寄せるパワーよりも、手元に伝わる魚の引きの味わいや竿の曲がり方の美しさを重視した設計のため、”最も魚の引きがダイレクトに楽しめる延べ竿”と評価できますが、少し良型の魚が掛かっただけでパワー不足を露呈してしまい、ラインブレイクやハリ外れの原因になります。渓流竿は、足場の悪い場所で移動を繰り返す渓流釣りを想定し、軽さとコンパクトな仕舞寸法とを優先して作られていますが、トラウト類を相手にする性質上、パワーもある程度持ち合わせています。
万能竿はその名の通り、さまざまな釣り方やフィールドで無難に使えるように設計されていますが、オールマイティー性を高めるために硬めに作られているため、”小物相手では魚の引きが死んでしまい、釣り味がイマイチ楽しめない”と筆者は感じます。アユ竿は前述のように、友釣りにはピッタリとマッチした設計であるものの、他の釣り方への流用はおすすめできません。釣り入門者が最初に購入する延べ竿として最もおすすめなのは、適度なパワーと優れた携帯性とを兼ね備えた渓流竿でしょう。
長さの選び方には, 特に注意を払いたい
前述したように、延べ竿の適切な長さを判断するうえでは、フィールドの水深、狙うタナ、ポイントまでの距離、竿先から水面までの高さ、竿を構える角度の5つの要素を勘案しなければなりません。フィールドの水深や狙うタナについては、それほど難しく考える必要はありませんが、その他の要素は相互に関係しているため、長さの選び方において特に注意が必要です。
基本的には、竿を構える角度が垂直に近ければ近いほど、竿先から水面までの高さは低くなり、ポイントまでの距離を確保することは難しくなりますし、逆に、竿を構える角度が水平に近ければ近いほど、竿先から水面までの高さは高くなり、ポイントまでの距離を確保することが容易になります。竿を構える角度は、水面から釣り座までの高さによって決まるため、ポイントまでの距離を考慮しなければ、高さが低い場所では短い竿、高さが高い場所では長い竿が適しています。
延べ竿においては、大は小を兼ねますので、淡水のフィールドでは3.9m、海水のフィールドでは5.4mの延べ竿を選んでおけば無難です。釣り入門者の場合は、5.4mよりも長い延べ竿でないと対応できないフィールドでは、延べ竿を使う必要性そのものを再検討するのが賢明です。
おすすめの延べ竿は?
おすすめの延べ竿: その1
日本における二大タックルメーカーのひとつである「シマノ」が製造するヘラ竿です。ヘラ竿の中でも、大型のヘラブナやコイに特化した設計のこの製品は、海水のフィールドでの流用にも最適で、蛇口には、竿先へのラインの絡みを低減する「マイクロまわリリアン」が採用されています。
おすすめの延べ竿: その2
日本における二大タックルメーカーのひとつである「グローブライド」が製造する、「ダイワ」ブランドの渓流竿です。手頃な価格ながら、レジンの減量によってパワフルなブランクスを実現する「HVF」テクノロジーや50cmズーム機能を採用するなど、ベテランアングラーでも十分満足できるコストパフォーマンスに優れた、筆者一押しの渓流竿です。
リール竿ばかりではなく, 延べ竿も必要に応じて活用していこう!
多くの人は”釣り竿”と聞くと、真っ先にリール竿を思い浮かべがちですが、延べ竿も幅広い釣り方で使われている竿であり、リール竿にはないメリットがたくさんあります。皆さんも、必要に応じて延べ竿を積極的に活用し、より快適に、より良い釣果を得ていきましょう。