みなさんは名護屋城をご存じでしょうか? 築城したのは豊臣光秀です。朝鮮出兵に当たって拠点とするために築いたもので、その周囲には名だたる武将が陣屋を設けました。現在でも加藤清正や徳川家康の陣屋跡という標識が残っています。
名護屋漁港はこの名護屋城跡のすぐ下にあります。たる武将が陣屋を設けました。現在でも加藤清正や徳川家康の陣屋跡という標識が残っています。名護屋漁港はこの名護屋城跡のすぐ下にあります。
●名護屋浦という入江
呼子〜加部島を頂点とする東松浦半島には奥深い入江が四か所あります。西から伊万里湾、仮屋湾、外津(ほかわづ)浦、名護屋浦と並んでいます。名護屋浦のすぐ沖には加部島が浮かび、しかも奥深い入江ですから、この湾内は一年中波が穏やかです。テトラの類はなく、岸壁のすぐ近くに建造物があります。ほとんど波は立たず、建物が海水の被害に遭う心配はないからです。
釣り場は主に西岸に展開しています。湾口には赤灯波止があり、その南側に岸壁が長く続き、可能ならどこでも竿出しができます。極端な話、駐車スペースがあって船が停泊してなければどこでも釣りができるのです。もちろん、海で生活をしている人たちのジャマになるようでは困ります。その点にさえ注意すればどこでも竿出しできますから、収容者数は非常に多いのです。
●人気が高いのはアジ、チヌ、イカ類
湾内は平均して水深があるものの、潮の動きはあまりよくありません。したがって、対象魚はある程度限られます。人気が高いのはアジ、次いでチヌ、そしてアオリイカやコウイカ、ササイカなどのイカ類です。グレは赤灯波止で釣れますが、型も数もあまり望めません。あと、メバル、スズキ、マダイ、カサゴなどもヒットします。この一帯はアジの釣期が長く、ほとんど1年中釣れるといっていいでしょう。シケることがないから冬でもサビキ釣りが可能で、しかもサイズが大きくなります。釣り上げたアジをエサにするとスズキもヒットします。
マダイの釣果は名護屋大橋下の東岸でのものですが、他のエリアでは遠投カゴ釣りをする人はほとんどいないせいで、未知数の部分が多いというのが現状です。
●お持ち帰りサイズのアジは沖の深場に
アジの産卵期は、九州では3〜5月といわれています。その時期に生まれた小アジは8〜9月から釣れ始め、10㎝にも満たないサイズであるため豆アジと呼ばれています。唐揚げや南蛮漬けにすればそれはそれで美味しいのですが、三枚下ろしにしたフライもまた美味しいものです。三枚に下ろしておけばほかの料理に使えますし。
アジのサイズがよくなるの大体秋の終わりからです。というわけで、年明けの1月にこの名護屋漁港を訪れました。北西の季節風が強めに吹いていましたが、ここは奥の深い入江だし、冷たい風さえ防御していれば釣りは楽しめるのです。
同行したのはカゴ釣りの名手であるMさんです。日中のアジは深場に潜んでいることが多く、遠投して深場を探った方が確実なのです。そのためには、足もとのサビキ釣りよりも遠投カゴ釣りが有利なのはいうまでもありません。そこで、Mさんの助けを借りようというわけです。
●赤灯波止内側の埋立て岸壁で釣りを開始
Mさんが選んだ釣り場は赤灯波止内側の埋立て岸壁です。呼子沖には加唐島(かからじま)や松島、馬渡島(まだらじま)などの磯釣り場があり、そこへ案内してくれる渡船の船着場があるところです。釣り客用の駐車スペースが広く確保されていて、駐車に心配する必要はありません。足場もよく、広く探ることができます。Mさんはそのほか、アジが好む条件なども計算しているようですが、ボクはまだそこまで計算できないというのが現状です。
釣りを開始したのは午後2時過ぎでした。これから夕マズメにかけて釣りをしようというのです。さすがにこの時期はサビキ釣りをする家族連れは少なく、わずかに常連らしい釣り人が数組いるだけです。
遠投カゴ釣りをする場合は中サイズのアミカゴの下に長さを変えた50〜70㎝のハリスを2本出し、それにオキアミを装餌します。ですから、投入時に仕掛けを絡ませないようにしなければなりません。絡まずに着水したのを確かめることも大切です。Mさんはこともなげにそれをやってのけます。
●最初は小アジ、そして中アジが
Mさんは50mほど投げています。ウキ下は竿2本。約10mです。ボクもそれに合わせ、ときどき絡ませながらもなんとか釣りを始めました。早々にMさんにアタリが出ました。さすがはMさんです。ところが、魚はサイズの小さい小アジです。1月でも10㎝クラスがいるようです。
小さい魚は警戒心がないからすぐに食ってくるんだよ……Mさんはそう言います。同じサイズのアジはボクにもヒットしました。釣ってはリリース、釣ってはリリースを繰り返します。
もしかして今日はこのサイズのアジしか釣れないかも。そんな考えがボクの頭に浮かんだ瞬間、Mさんの声。来たよ! 1.5号の竿は大きく曲がっています。明らかに小アジの重みではないようです。上がってきたのは待望の20㎝オーバーです。やっぱりいました。願わくはこのクラスがたくさんいてくれればいいのですが。
心配は不要でした。Mさん、そしてボクの仕掛けにも次々とアジが食ってきます。合間には小アジも混じりますが、順調に中アジを追加していきます。夕方が近づくと入れ食い状態になりました。
もういいだろう、帰ろうや……、Mさんが声をかけてくれなかったらまだまだアジを釣り続けていたかもしれません。そういわれて中型クーラーボックスを見ると、半分以上がアジで埋まっていました。この分では帰ってからの魚の処理が大変です。
●まとめ
名護屋漁港ではさまざまな釣りが楽しめます。それは多くの釣り場にもいえるのですが、ここは冬でも快適な釣りができるという大きなメリットがあります。みなさんが住んでいる近くにこのような釣り場はありますか? あったとすればそれは非常に恵まれているといえます。魚の種類やサイズ、数には不満があるかもしれません。だが、自分に与えられた環境で精一杯楽しむというのも釣りとの接し方と考えていいのではないでしょうか。