みなさんはマゴチという魚をご存じでしょうか? 関東では昔から沖釣りの対象魚として知られていますが、堤防釣りの常連であるみなさんにはあまりなじみがないと思います。
しかし、ルアー釣りが普及するのにともなって堤防やサーフでも釣れることが徐々に広まっています。また、生きている小魚をエサにする泳がせ釣りも人気を集めています。佐賀県にはそんなマゴチが釣れるところが数か所あります。これから紹介する伊万里湾大橋下もそのひとつです。
●奥の深い伊万里湾
元寇で知られる鷹島、さらには福島という大きな島で囲まれたその奥に伊万里湾はあります。そのような奥の深い湾ではあまり魚が期待できないという共通点があるのですが、伊万里湾に限ってはいささか事情が異なります。伊万里川、有田川という大きな川が流れ込んでおり、プランクトンやその他のエサが豊富だからです。河口は全国的に見ても好釣り場であることが多く、湾奥である伊万里湾も例外ではないというわけです。
河口に特有の魚としてはスズキやチヌ、ハゼ、コノシロなどがあります。それに加えて、伊万里湾大橋下の場合は大雨後でなければ淡水の影響を受けませんから、キス、アジ、イワシも回遊してきます。さらに、マゴチもいるし、コウイカ、アオリイカもヒットします。
●足場がよくてクルマが横着けできる
伊万里市市街地の北部にある黒川地区に七ツ島工業団地が造成され、2013年から供用されています。しかし、このエリアからコンテナターミナルのある久原埠頭までは伊万里湾が入り込んでいるため、かなり遠回りして資材を運ぶ必要がありました。そこで時間と手間、経費を節減する目的で橋を架けたのが2003年です。これが伊万里湾大橋で、南側のたもとは整備されて広大な木材コンビナートが出現しました。
そして、一部ではあるものの岸壁に沿って道路ができ、家族連れ向きの好釣り場ができたのです。フェンスがあるため小さい子供さんがいても心配はいりません。投げ釣りならこのフェンスに竿を立て掛けられます。
そのほか、ルアー釣り、ウキ釣り、エギング、サビキ釣りとさまざまな釣りが楽しめます。
●マゴチの泳がせ釣りに挑戦
昔から釣り人の間でなじんでいる慣用句のひとつに「照りゴチ」という言葉があります。梅雨が明けて太陽が強く照りつける時期になるとコチがよく釣れるようになるという意味です。
マゴチの産卵期は夏で、その頃になると接岸してくるため浅場で釣りやすくなります。その時期に合わせ、7月末にB君と伊万里湾大橋下に釣行しました。マゴチの活性が高くなるのは暗くなってからなので(日中でも釣れることはありますが)、昼過ぎからエサのキスを釣り、夕方からマゴチを釣ろうという計算です。
泳がせ釣りではアジやメゴチ、ハゼなどをエサに使いますが、もちろん元気のいい小魚は釣具店でも販売していませんから、自分で釣らなくてはなりません。アオムシでいいので、エサ代に関しては安上がりです。
クルマはB君に任せていますから、ボクはゆっくりビールを飲みながらキス釣りを始めます。いつものキス釣りなら大きいサイズが釣れると嬉しいのですが、エサにするときは小さい方が有利です。これはハゼやアジも同様です。
小さいハリでピンギスを食わせ、大切に生かします。元気なエサほど食いがいいからです。
●ヒラメ20、マゴチ40
早めに夕食をとっていよいよマゴチ釣りを始めます。エサのキスは20匹ほど釣ることができました。海水をこまめに替えて水温が上がりすぎないように注意します。小魚をハリに刺す方法はいろいろありますが、ボクはいつも下アゴから上アゴまで刺して、口が開かないようにしています。B君は背掛けです。その方が弱らないと彼は信じているのです(あまり変わりはないような気がするのですが)。
仕掛けを軽く投入します。中通しオモリの先にハリスを結んでハリをセットすれば仕掛けは簡単なのですが、ボクは捨てオモリを使ってエサが海底の20〜30㎝上を泳ぐようにしてみました。マゴチは砂に潜って獲物が接近してくるのを待ち構え、射程範囲に入ったところで一気に襲いかかります。そこで、海底に沈んだ仕掛けを手前に少しずつ引いてくるのですが、海底を引きずられるとエサが弱るのが早いのです。
弱ったエサを交換しながら釣りを続けます。B君も同様です。やがて完全に暗くなりました。少しダレ気味なB君に、これからが本番だぞと声をかけます。
その言葉通り、間もなくB君にアタリが出ました。ところが、あーッ!という大きな声。そして、せっかく釣れたのにと小さな声。バラしたようです。詳しく聞くと、ゴンゴンというアタリがあったのに、アワセてもハリに掛からなかったそうです。
アタリがあって何秒待った? そう聞くと、待たずにすぐアワセたという返事です。
昔から「ヒラメ20、マゴチ40」という言い伝えがあります。
生きエサを使ったときはそれだけ待ってアワセなさいという意味です。仕掛けやタックルが進歩した現在ではそれほど待つ必要はありませんが、とにかくすぐアワセるとハリに掛かる率は低くなります。そんなことをB君に伝えると、最初に言っといてくださいよーとなじられてしまった。
そして、今度はボクにアタリが。
ゴツン!衝撃的なアタリです。すぐアワセたくなるのはわかるのですが、ここで我慢しないといけません。道糸を張って軽くテンションをかけたままで待ちます。エサのキスを飲み込み、動き出したところがアワセのチャンスです。竿先がグーンとしなったところでアワセます。体型に似合わず、マゴチはよく引きます。1号の磯竿ではコントロールできませんから、最低でも2〜3号を使ってください。
マゴチが浮いてきました。60〜70㎝はありそうです。
その後は小型ですが2匹のマゴチを仕留め、B君も1匹釣り上げて納竿しました。
●まとめ
泳がせ釣りがどのようなものか少しは理解いただけたでしょうか? 絶対数が少ないためマゴチやヒラメが数釣れることはありません。1〜2匹釣るのがせいぜいです。しかし、平均してサイズは大きく、しかも食べて美味しいのですから十分満足できます。
それに、伊万里湾大橋下では泳がせ釣り以外の釣りも楽しめます。ウキ釣り、ルアー釣り、投げ釣りのほか、サビキ釣りやエギングも可能なのです。対象魚が豊富で足場はよく、アクセスも簡単とあれば、ファミリー釣り場としてはAクラスといっていいでしょう。機会があれば、みなさんもぜひ釣行してみてください。