釣り針にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ハリに関する知識を深め、適切な選び方ができるようになれば、さらなる好釣果を目指すことが可能です。この記事では、代表的なハリそれぞれの特徴と共に、おすすめの各種ハリについてもご紹介します。
ハリの種類は多彩で 選び方は釣果を左右する
ハリは、魚釣りにおいて絶対に必要不可欠なアイテムですが、その種類は多岐にわたります。ハリを取り扱うコーナーが充実した釣り具店に行くと、さまざまな種類のハリが所狭しと並んでいる姿を目にすることができ、ハリの種類がいかに多彩なのかを物語っています。ハリは仕掛けの中で、魚体と直接接する唯一のアイテムであるため、選び方は非常に重要です。
というのも、魚の口への掛かりやすさが決まるのはもとより、エサの持ちや動きも変わってくるからです。また、ハリは金属でできている仕掛けアイテムのため、一定の重量があり、繊細な仕掛けの場合は、ハリが仕掛け全体の重量バランスを左右します。そのため、どのようなハリを選ぶかによって、水中での仕掛けの動きに大きな違いが生じることになるのです。ですから、ハリの選び方が、結果的に釣果を決定付ける要素となることは珍しくありません。
代表的なハリそれぞれの特徴を解説!
5種類のハリを4つの要素に分けて詳しくご紹介!
ベストなハリ選びをするためには、それぞれのハリの特徴を理解しておかなければなりません。ここでは、さまざまな釣り方で幅広く使われている5種類の代表的なハリそれぞれの特徴を、形状の特徴、魚の口への掛かり方、それぞれに分類されるハリの種類、その他の4つの要素に分けて徹底解説していきます。
※ ハリの各部名称について
この記事で取り上げる内容を理解するためには、ハリの各部名称について知っておく必要があります。なお、ケンについては、付いていないハリもあります。
代表的なハリの特徴① 伊勢尼
伊勢尼型の特徴1. 形状の特徴
伊勢尼型のハリの形状は、腰曲げから先曲げにかけての部分のカーブが、均等且つゆるやかになっています。曲がり方がきつくなったり角ばったりしている部分がなく、”多くの人がイメージする一般的な釣り針の形状”と言えるでしょう。フトコロについては、角がないゆるやかな曲がり方をしている故に、5種類の中ではもっとも広いのが特徴です。
また、胴の長さが短いことも特徴のひとつで、ハリの軸全体におけるハリ先が占める長さも相対的に長く、チモト(ハリスを結ぶ部分)と針の先端部との高さの差は、5種類のハリの中で最も小さくなっています。
伊勢尼型の特徴2. 魚の口への掛かり方
前述したように、ハリの軸全体におけるハリ先が占める長さも相対的に長くなっているため、魚がハリ先をくわえた際に貫通するハリ先の長さが長くなり、カエシをしっかりと超えて深く刺さり込んでくれます。また、アワセを入れた際に、ハリ先が内側に大きく回り込む形で立ち上がるため、アワセるタイミングが少し早かったり、魚の活性が低くて、しっかりと強くエサをくわえてくれなかったりしても、すっぽ抜けしづらい点も長所と言えるでしょう。
ただし、エサを吸い込むように食べるタイプの魚の場合、ハリ先を直接的にくわえるのではなく、エサを吸い込む際に一緒にハリ先のみを吸い込む形になるため、ハリ先の長さが長く、フトコロも広い伊勢尼型のハリは不向きです。
伊勢尼型の特徴3. 伊勢尼型に分類されるハリの種類
伊勢尼型に分類されるハリの代表的なものは、何と言っても「チヌバリ」でしょう。チヌバリは、標準の伊勢尼バリよりも軸が細く、柔らかいオキアミを付けても裂けにくくなっています。その他にも、生きエサを使わないスタイルの船釣りで使われるハリ全般、ヘラブナ釣りで使われる”丸バリ”と呼ばれるタイプのハリ全般、渓流釣りで使われるハリ全般などについても、ほとんどが伊勢尼型に分類されるハリです。
タックルメーカーオリジナルのハリとしては、伊勢尼型では貴重なケン付きタイプである「ウルトラ競技チヌ(オーナーばり、チヌ釣り用)」や、軸の表面に「クロスギザ」と呼ばれる細かなギザギザを付けることで、エサ持ちの向上が図られている「T1-だんごマスター(がまかつ、ヘラブナ釣り用)」など、その種類は多岐にわたります。
伊勢尼型の特徴4. その他
伊勢尼型のハリは、非常にトータルバランスが高く、極端な性質を持っていないため、ハリ選びが困難な釣り初心者にはおすすめの形状です。チヌバリのように、多くの釣り方で幅広く使われる種類のものは、ハリスが結ばれた状態で販売されており、ハリス結びが面倒な方にもピッタリでしょう。
代表的なハリの特徴② 袖型
袖型の特徴1. 形状の特徴
袖型のハリは、腰曲げと先曲げそれぞれのカーブになっている部分の範囲が狭く、直角に近い形でシャープに曲がっている形状が特徴です。釣り方によっては、「角バリ」と呼ばれることもあり、全体的に丸みのある曲がり方をしている伊勢尼型のハリとは対照的に、角ばったカーブと直線とで構成された形状をしています。
胴と針先の角度はほぼ同じものが多く、故に、フトコロの広さが均一になっている部分の面積も広くなっています。胴の長さは、5種類の中では標準的なものです。
袖型の特徴2. 魚の口への掛かり方
胴と針先の角度はほぼ同じである袖型のハリは、アワセを入れると、ハリスが引っ張られる角度とほぼ同じ垂直方向にハリ先が刺さります。ハリ先を内側に大きく回り込ませて貫通させるタイプのハリは、アワセがしっかり決まれば、魚の口により深く刺さって抜けにくくなるのですが、しっかりと内側に回り込むまでには時間が掛かり、ハリスが斜め方向に強く引っ張られる力も必要になってきます。
一方、垂直方向に貫通するタイプのハリは、アワセの動作の早いタイミングでハリ先の大部分が貫通してくれるため、アワセの動作の最終的な段階における刺さり具合は浅くなるものの、軽く素早いアワセでハリ掛かりしてくれるメリットがあります。ですので、ハリスが細い故に強いアワセができず、エサをくわえる力が弱い魚が多い淡水のフィールドでは、特に効果的なのです。
袖型の特徴3. 袖型に分類されるハリの種類
標準の袖バリ以外で袖型に分類されるハリの多くは、淡水のフィールドで使われるものが大部分を占めています。代表的なものとしては、渓流釣りで用いられるオーソドックスなハリである「ヤマメバリ」や、ヘラブナ釣りで使われる”角バリ”と呼ばれるタイプのハリ全般などが挙げられます。
タックルメーカーオリジナルのハリでは、警戒心がひと際強いヤマメ専用設計が特徴の「A1-ゼロ渓流」(がまかつ、渓流釣り用)や、クワセエサでの使用に特化され、胴が短く作られているのが特徴の「金へらサスケ」(オーナーばり、ヘラブナ釣り用)などがあります。
袖型の特徴4. その他
カーブが角ばっているタイプの形状のハリは、魚が掛かった際の負荷がその部分に集中しやすく、強度面での弱点があるため、袖型のハリは、比較的小型のターゲットを相手にする釣り方で使われることがほとんどです。とはいえ、直線的なハリ先は、「スプリングバック現象」と呼ばれる、アワセ時に加わる強い衝撃によって、一瞬だけハリ先が外側に広がって戻ることですっぽ抜けを起こしてしまう現象が起きにくいという長所もあり、”袖型のハリのような細い軸のハリに合った形状である”と評価できます。
代表的なハリの特徴③ 流線型
流線型の特徴1. 形状の特徴
流線型のハリの形状の特徴は、チモトの位置と腰曲げの曲がり方とにあります。流線型のハリは、チモトがフトコロのほぼ中心点の位置にあり、それに伴って、腰曲げのカーブしている部分が、先曲げからハリ先と同じ角度にかけて曲がる部分と、ハリ先と同じ角度からチモトにかけての部分との2ヵ所に分かれています。腰曲げが、曲がる方向を変えて2段階でカーブしているハリは他に例がなく、5種類の中でも特異な形状です。
先曲げのカーブは、伊勢尼型のハリと同様に丸く、ゆるやかに曲がっていますが、腰曲げが非常に長いため、ハリの軸全体におけるハリ先が占める長さは、相対的に短くなっています。フトコロについては、ハリの軸の全長を考慮すると、狭めと言えるでしょう。
流線型の特徴2. 魚の口への掛かり方
流線型のハリは、腰曲げの部分が、フトコロの中心点に向かって折り畳まれるように曲がっているため、腰曲げの部分の、軸が口に当たる面積が狭く、魚が容易に吸い込みやすい形状になっています。また、ハリ先の相対的な長さも短くなっていますので、ハリ全体の高さの半分程度しか吸い込まれていない段階であっても、しっかりと魚の口の中にハリ先全体が入ってくれるのがメリットです。
ただ、流線型のハリは、エサを水ごと吸い込むようにくうタイプの魚にはピッタリなのですが、エサをパクっとついばんで食べるタイプの魚の場合だと、フトコロの相対的な狭さや、ハリ先の相対的な短さがデメリットになってしまい、フッキング性能は劣ってしまいます。
流線型の特徴3. 流線型に分類されるハリの種類
流線型に分類されるハリは、カレイ類やシロギスを狙う釣り方で用いられるものが中心です。標準の流線バリとキスバリ以外では、メーカーオリジナルのハリとして、標準の流線バリよりも大型魚への対応力を高めた「ビッグサーフ」(オーナーばり、投げ釣り用)や、手持ちスタイルの釣り方において、アワセで掛けるだいご味を味わいたい人におすすめの「あわせカレイ」(がまかつ、船釣り用)などのラインナップがあります。
流線型の特徴4. その他
流線型のハリは、ハリ先全体を吸い込ませてハリ掛かりさせるタイプのハリですので、”アワセがベストなタイミングよりも遅れがちな釣り初心者でも、きちんとハリ掛かりさせられる“という利点があります。
流線型のハリを使う際に注意が必要なのが、サイズの選び方です。前述したように、流線型のハリは軸が長いため、一見すると大型のハリに見えるものの、フトコロが相対的に狭く、ハリ先は相対的に短くなっているため、フトコロとハリ先とを基準に適切なサイズを判断しようとすると、本来の適正サイズよりも大きいものを選んでしまう可能性があります。ですから、サイズ選びに自信がない場合は、釣り具店の店員にアドバイスをもらうようにするのが無難です。
代表的なハリの特徴④ 狐型
狐型の特徴1. 形状の特徴
狐型のハリの特筆すべき特徴は何と言っても、ハリ先の小ささと角ばった先曲げとにあるでしょう。ハリの軸全体におけるハリ先が占める長さは、5種類の中で最も短くなっており、ハリ先だけが極端に小さい独特の形状をしています。先曲げのカーブは、直角を超える鋭角になっているため、ハリ先が折りたたまれるように内側を向いているのが特徴です。
腰曲げは全体的に直線的で、狭い範囲で鈍角に角ばって曲がっています。フトコロの広さは、5種類の中で最も狭く、他の4種類は一線を画しています。
狐型の特徴2. 魚の口への掛かり方
ハリ全体をくわえられる大きさの口を持つ魚が狐型のハリをくわえると、ハリ先が小さいうえに内側を向いているため、非常に掛かりにくくなってしまいます。とはいえ、ハリ先しかくわられない大きさの口の魚の場合だと、小さなハリ先によって、しっかりとカエシを超えて貫通させることができ、鋭角の先曲げで魚の口をしっかりと保持してくれるため、”小さなおちょぼ口で吸い込むようにエサをくう魚には最適”と言えるのです。
なお、狐型のハリに口の小さな魚が掛かると、ハリ先のみが魚の口の中に入り、ハリの軸全体の半分程度が口から出た状態になります。
狐型の特徴3. 狐型に分類されるハリの種類
現代の釣り針における”狐”という言葉は、前述した形状を持つハリの総称であり、”狐バリ”という名称のハリは販売されていません。狐型に分類されるハリの代表的な種類としては、現代における狐型のハリの標準である「秋田狐」の他、シロギス釣り、ウナギ釣り、ワカサギ釣り、タナゴ釣りなどで使われるハリ全般が挙げられるでしょう。
メーカーオリジナルのハリも数多く存在しており、ハリ先の抜群の刺さりが自慢の「ワカサギ鬼鈎」(ささめ針、ワカサギ釣り用)や、活性が極端に下がる冬季攻略の強い味方になってくれる「極タナゴ」(がまかつ、タナゴ釣り用)など、タックルメーカー各社の創意工夫が光る魅力的なハリが多数ラインナップされています。
狐型の特徴4. その他
一般的な形状のハリで、タナゴ類などの、極端に口の大きさが小さい魚に合わせてハリ先を小さくしようとすると、ハリ全体の高さもそれに比例して低くなってしまい、ハリスを結ぶためのチモトの部分を確保できなくなってしまいます。ですから、ハリ先のみが小さくなっている狐型のハリは、非常に理になかった形状であり、特定の釣り方においては必要不可欠な存在です。
代表的なハリの特徴⑤ 丸セイゴ型
丸セイゴ型の特徴1. 形状の特徴
丸セイゴ型のハリの形状は、狐型ハリの特徴と類似する部分があるものの、ハリ先の角度や大きさが異なっています。腰曲げは、狐型のハリ同様、狭い範囲で鈍角に角ばって曲がっており、伊勢尼型のハリのようなゆるやかで平均的なカーブとは対照的です。
先曲げについても、カーブの形状自体は、直角を超える鋭角でハリ先が内側を向いているのですが、その角度は狐型のハリほどキツくないため、”ある程度内側を向いている”というレベルです。そのため、フトコロの広さは狭めではあるものの、一定の広さは確保されています。また、ハリの軸全体におけるハリ先が占める長さも極端に短いわけではなく、”5種類の中では標準的“と言えるでしょう。
丸セイゴ型の特徴2. 魚の口への掛かり方
前述したように、丸セイゴ型のハリは、ハリ先が内側を向いているため、魚がハリをくわえた際のハリ先の刺さりの良さについては、最も良好である伊勢尼型のハリには劣っています。とはいえ、一度刺さってしまえば、鋭角の先曲げが魚の口をしっかりと保持してくれますので、”やり取り中に魚に大暴れされても外れにくいのが長所“と言えます。
水と一緒にエサを吸い込むようにくう魚への適合性も極端に悪いわけではなく、”非常にバランスの取れた形状“と評価できます。
丸セイゴ型の特徴3. 丸セイゴ型に分類されるハリの種類
丸セイゴ型に分類されるハリは、標準の「丸セイゴ」のみとなっています。ただ、チヌを狙う釣り方を中心に一部のアングラーが愛用している「カイズバリ」については、誕生の経緯はチヌバリに類似しているものの、形状のみで判断すれば、丸セイゴ型のハリとして分類されるでしょう。
丸セイゴ型の特徴4. その他
丸セイゴ型のハリはその名の通り、セイゴ(スズキの幼魚)釣りにおいて、「エラ洗い」と呼ばれる、スズキ特有の暴れ方によってハリが外れてしまう問題をできる限り防ごうと試行錯誤した末に誕生したハリです。ですから、掛かってから大暴れする魚には、まさにもってこいなのです。
また、ハリ先がある程度内側を向いているため、”根掛かりしにくい“というメリットもあります。
それぞれのおすすめのハリは?
おすすめのハリ① 伊勢尼型
各種仕掛けアイテムを中心としたタックル総合メーカーである「がまかつ」が製造するハリです。チヌバリは、伊勢尼型に分類される代表的なハリであり、幅広い分野で無難に使える万能性や豊富なサイズラインナップが魅力です。
おすすめのハリ② 袖型
各種仕掛けアイテムを取り扱う「オーナーばり」が製造するハリです。フナ釣りで古くから使われてきた「関東スレ」を基本形として、胴の長さをわずかに短くし、軽量化することで、繊細さが要求されるスタイルのヘラブナ釣りへの対応力を高めた製品です。
おすすめのハリ③ 流線型
各種仕掛けアイテムを取り扱う「ささめ針」が製造するハリです。ハリスが結ばれた状態で販売されている製品ですので、釣り初心者がチョイ投げ釣りで手軽に使用するには最適なハリでしょう。
おすすめのハリ④ 狐型
がまかつのハリです。基本の秋田狐よりも軸が太くできているため、比較的大型の魚にも安心して使用可能な点がうれしいです。
おすすめのハリ⑤ 丸セイゴ型
がまかつのハリです。チモトがカン付きになっているタイプのハリですので、サルカン結びしかできない方や、通常のハリ結びでは結びにくいハリスを結びたい場合に便利でしょう。
ハリの選び方には とことんこだわろう
釣り針は一見すると、どれも似通った形に見えますが、実際にはそれぞれに特徴の差があり、非常に奥の深い世界です。満足のいく釣果を得たいのであれば、ぜひともハリの選び方にとことんこだわり、狙うターゲットの種類や釣り方に合ったベストなハリをチョイスしましょう。