ファミリーフィッシングに適した釣り場とはどんなところだと思いますか? アクセスが簡単で広くて足場がよく、トイレが近くにあり、魚がそこそこ釣れる……そんなところではないでしょうか。伊万里にある名村造船岸壁はまさにその条件にピッタリです。それに加えてヒットする魚の種類が多く、次はどんな魚がアタるのが楽しみになる、そんな釣り場をこれから紹介しましょう。
●時化に強い伊万里港
奥深い入江の奥に伊万里港があります。ここには伊万里川と有田川という大きな川が流れ込んでいて干潟が形成されているのですが、伊万里港は平均して水深があり、天然の良港といわれています。さらに、すぐ沖には福島、そのまた沖には鷹島が浮かび、沖から押し寄せる荒波を完全にシャットアウトしています。極端な言い方になりますが、台風以外は釣りができるといってもいいでしょう。これもファミリー釣り場に適した大きな条件です。
七ツ島工業団地はこの伊万里港の一画にあり、名村造船所もここに工場を建てました。釣り場はその前に広がる埋立地で、岸壁が長く続いています。足元から深く、すぐ後ろにクルマを停められますから非常に便利です。障害物もなく、これ以上はないといえるほど条件が整っています。
●釣れる魚は非常に多様です
入江の奥にあるため潮の動きはよくないのですが、ふたつの大きな川が流れ込んでいることもあって、この名村造船岸壁ではさまざまな魚が釣れます。ざっと挙げてみましょう。
クロダイ、キビレ、スズキ、アジ、コノシロ、タチウオ、サヨリ、サワラ、シロギス、カレイ、ボラ、アオリイカ、コウイカ……etc。
ただし、歓迎できない魚もいます。バリ(アイゴ)、オコゼ、ゴンズイがそれです。特に、ゴンズイは暗い時間帯にヒットしますから正体が判明しないまま握りかねなく、背中の毒トゲが刺さる可能性が高いのです。くれぐれも注意してください。
当然、大型が望めるような場所ではありませんから、小・中型が中心になるでしょう。しかし、ファミリーで楽しむのならサイズより数を優先するべきでしょう。それに加えて種類が楽しめるのですから、まさにファミリーフィッシングに最適といっていいでしょう。
●釣り方もさまざまです
釣れる魚の種類が多いということは、釣り方もいろいろあると解釈できます。ビギナーの皆さんに人気があるのはサビキ釣りと投げ釣りです。
どちらも仕掛けは単純で、それでいていろいろな魚が釣れることで定評があります。事実、名村造船岸壁ではこのふたつの釣り方で大半の魚を仕留めることができます。
投げ釣りではシロギスやカレイ、クロダイ、キビレ、サビキ釣りではアジ、コノシロ、ボラ、スズキがアタります。スズキ、サワラ、マゴチ、タチウオはルアー釣りの対象です。
サビキ釣りでスズキというと、ン? と思う人が多いかもしれません。しかし、サビキバリに掛かった小アジを食べようとしたスズキが仕掛けに絡まる例は少なくないのです。
また、投げ釣りにクロダイがヒットするのは珍しくありません。本来、クロダイは海底近くに生息しています。そして、安全を確認してから口先でつつき、口に入れるという慎重な動きでエサを食べます。その点、投げ釣りではエサが底に横たわっていますから、警戒されるような不審な動きをすることはありません。
●夏の終わりはサビキ釣り、泳がせ釣りが楽しい
8月の終わり、子どもたちの夏休みの最後の楽しみにとAさんが家族連れで釣りに行くというので同行しました。名村造船岸壁に到着したのは午前7時です。平日ですが、すでに何人かの釣り人が竿を出しています。ここは本当に人気があり、平日でも必ず釣り人がいます。
Aさんたちは岸壁のほぼ中央でサビキ釣りを始めました。ボクは右端の岩場でクロダイ釣りの準備をします。ここは潮位が高いと足場が狭いのですが、幸いこれから満潮に向かうところなので自由に選べます。ただし、エサ盗りが多い時期なのであまり期待はできません。この岸壁では落とし込み釣りも可能なので、そちらにするべきだったかなと一瞬思いましたが、すぐに打ち消しました。やはり釣り慣れたウキ釣りが一番です。
遠目に見えるAさん一家の竿が曲がり、白っぽく見える魚が上がってきました。子ども達が喜んでいる顔が想像できます。アタリがないので彼らの様子を見学に行きます。ふたりの子どもさんは釣り慣れている様子で、ハリに掛かった小アジを自分で外してアミカゴにアミエビを詰め、仕掛けを投入します。
Aさんはと見ると、小アジをエサにして投げ込んでいます。この時期はスズキやマゴチがヒットするそうです。子ども達がエサを釣り、それで大物を狙うというわけで、しっかりと連携が取れています。スズキもマゴチも絶対数が少ないのでそうそう釣れるわけではありません。しかし、大物が出るかもという夢があり、ダメもとでやってみる価値は十分あります。
ボクは再び自分の足場に戻ってクロダイ釣りを再開しました。予想通りエサ盗りの猛攻は激しく、フナムシやカニでも食べられてしまいます。カラスガイにするとようやく残るようになりましたが、今度はなかなかアタリが出ません。納竿寸前にようやく30㎝クラスがヒットして、この日の釣りは終了しました。
Aさん一家は小アジを大漁していて、Aさんが早くも魚の処理を始めていました。残念ながら泳がせ釣りにアタリはなかったそうです。でも、小アジの唐揚げや南蛮漬けは食べて美味しく、お土産として十分喜ばれるものでした。
●まとめ
この日は右手の岩場でクロダイ釣りをしましたが、岸壁でも十分釣れます。岸壁は長く、魚はどこでもヒットしそうですが、常連の皆さんは自分のポイントを決めていて、同じところで竿を出しています。みなさんも名村造船岸壁に通って自分のポイントを作ってみてはどうでしょう。この釣り場は全体に潮が速く、流れはさまざまに変化します。それを知ると今後の釣りに大いに役立ちます。
ただし、ここは七ツ島工業団地の一画です。岸壁は原材料を、または製品を積み降ろしする大型船が発着するためのものです。しばしば岸壁に横付けされていますから、釣り場を制限されるケースがままあります。その場合は可能な範囲で釣りをしてください。