釣りをしている人であれば「ヒスタミン中毒」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「サバがなりやすい」や「鮮度が落ちた魚は要注意」といった話を耳にしますが、サバ以外の鮮度の良い魚でも中毒を引き起こすことがあります。原因を知って適切に扱わないと、ヒスタミン中毒になる危険は常に付きまといます。釣り人は特に。
今回は、釣り人なら知っておきたいヒスタミン中毒の原因と症状、その対処法についてご紹介します。
1ヒスタミンとは
ヒスタミンは動物の体内に存在しており、かゆみやアレルギー症状の原因となる物質です。ただ、このヒスタミンが最初から魚に多く含まれているわけではありません。そこにはある種の菌が影響しています。
ヒスタミン生成菌がヒスチジンをヒスタミンに変える
魚にはヒスチジンというアミノ酸が含まれていますが、これをヒスタミンへと変えてしまうのが「ヒスタミン生成菌」です。この菌は常温ではどんどん増え、それにともなってヒスタミンも増加します。
釣り人の場合は気温の高い夏場が特に要注意です。少しの時間でも保冷を怠ればあっという間にヒスタミンが増加してしまいます。夏場の釣りで魚を持って帰る際は細心の注意を払いましょう。
また、この菌は最初から魚にいるわけではなく、流通する過程で付着します。そのため、擦れたり傷がついたりなどした魚をベタベタ触るとヒスタミン生成菌を付着させてしまう危険性が高まります。
ヒスタミンを多く含む魚類“青魚”
ヒスタミン=ヒスチジン+ヒスタミン生成菌であるため、ヒスチジンを多く含む魚はヒスタミンが作られやすいと言えます。その問題のヒスチジンは青魚に多く含まれることが知られています。
特に多いのは、
・カジキ
・カツオ
・ブリ
・マグロ
・サンマ
・サバ
・イワシ
この他にもヒスチジンを多く含む魚がいるので、青魚を食べる際は注意しましょう。
1ヒスタミン中毒の症状

ヒスタミンが多量に含まれる魚を食べた場合、数十分から数時間のうちに発疹やかゆみが現れます。他にも、嘔吐や下痢、めまいなど、ひどい場合は呼吸困難につながることもあるため、軽く見てはいけません。
ヒスタミン中毒の対処法

もし、ヒスタミン中毒の症状が出てしまったら、病院に向かいましょう。重症化することは少なく、その日のうちに回復するものの、病院で抗ヒスタミン薬を処方してもらうと早く治まります。
1ヒスタミン中毒を予防する方法

ヒスタミン中毒を防ぐためには、ヒスタミン生成菌を増やさないようにしなければなりません。ヒスタミン生成菌は常温で増加するので、冷蔵庫で保管しましょう。その際に、魚体をベタベタ触ったり傷付けたりなどしてはいけません。
また、厄介なことに一度生成されてしまったヒスタミンは加熱しても消えることはありません。「鮮度が落ちた魚は焼き魚」は通用しないのです。焼いても揚げても煮てもヒスタミンに影響はありません。そのため、しばらく常温に置いてしまった魚はその後、すぐに冷蔵庫に入れても、もはや手遅れです。そうなってしまうと、もったいないかもしれませんが廃棄するしか方法はありません。
また、一度冷凍した魚を解凍する場合も注意が必要です。早く解凍したいからといって常温で解凍すると、解けたそばからヒスタミンが増加してしまうことも。少なくとも、外側と中心部では解凍時間にズレがあるため、早い段階で溶けた部位はヒスタミンが増加してしまう危険があります。
ヒスタミンは見た目や匂いで判断することはできませんが、もし、舌にピリッとした違和感があるようであれば、それ以上食べ進めないほうが良いでしょう。
釣った魚はヒスタミン中毒に気を付けて美味しくいただこう!
新鮮で美味しい魚を食べたいがために釣りをする人も少なくありません。もちろん、それは釣りの醍醐味の一つで大切なことです。しかし、扱いが雑だったり、保冷を怠ったりなどすると、一日を締めくくるはずの楽しい食事が悲惨な状況になりかねません。
そうならないためには、丁寧に扱ってより良い状態の魚が食卓に並ぶよう心がける必要があります。「釣って良し、食べて良し」で一日を飾りましょう。