編集部注:本稿タイトルにクロダイに関して一般的ではない表現(海の女王)がありましたので訂正の上掲載しております

撮影:筆者
少しわかりにくいかもしれませんが、堤防のヘチの近くを泳いでいるクロダイです。あまり身を乗り出すと魚は逃げてしまいますから、できるだけ体は後方に引っ込めておきましょう。

みなさんはヘチという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「沖」の対語で、縁を意味しています。このフチからヘチという言葉が生まれたといわれていますが、まさしく堤防の縁を探る釣り方です。人気が高いウキ釣りはフィールドが広いためポイントが絞りづらいという難点があるのに対して、ヘチ釣りは狙う範囲が狭く、その点についてはビギナーの皆さんにとってありがたいといえます。

そして、もうひとつ、ヘチ釣りには大きな魅力があります。エサは大半が自給自足する関係で経費が安く上がることです。これは嬉しい事実です。

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●ヘチはエサがたっぷり

撮影:筆者
イガイなどの固定性生物は一定の水深に生息しています。完全に水の中ではありません。潮が引けば水面上に現れる位置で、それが潮間帯と呼ばれるエリアです。クロダイはこんな浅場まで浮いてきてエサを食べるのです。

堤防の壁面を見てください。イガイやカキ、カメノテ、ジンガサ(マツバガイ)などの固着性生物がびっしりと貼りついていると思います。ただし、そのエリアは限定されています。深いところにはありません。その範囲は満潮時と干潮時の水位の間で、潮間帯(ちょうかんたい)と呼ばれています。

固着性生物そのものがクロダイのいいエサだし、その生物の間にはカニやエビ、ムシ類が潜んでいます。つまり、クロダイの好物がたっぷりあるのです。
自然界に生息する魚が有力なエサ場を無視することはあり得ません。必ずここへ食事のためにやって来ます。それを狙い撃つためヘチに仕掛けを落とす。それがヘチ釣りの目的です。

ただし、潮間帯は浅いエリアです。警戒心の強い大型のクロダイはなかなか浅場まで浮いてきません。ここまで浮いてくるのは朝夕のマズメ(夜と昼間の境目)や海水が濁ったときに限られます。
では、潮が澄んでいる昼間はどこにいるかというと、沖の深場、または堤防の根際です。もっとも、クロダイという魚はエサを求めて回遊しています。自分の住みかから出て決まったルートを辿ってエサ場に至り、また住みかに戻ることを毎日繰り返しています。

●仕掛けは簡単でわかりやすい

ヘチ釣りでは堤防に沿ってサシエを落とします。エサが落ちる途中でクロダイがそれを食べたところでアワせてハリ掛かりさせます。したがって、ウキは使いません。
このことにより、仕掛けは非常に単純です。ラインとハリス、それを接続するスイベル、あとはハリとガン玉。それだけです。どんな仕掛けにするか迷うことはなく、ハリのサイズを別にすればワンパターンで十分です。

もっとも、クロダイのアタリをわかりやすくするために目印を使う釣り方もあり、そうなると若干の変更箇所が発生します。ヘチ釣りで用いる目印とは、2m前後のナイロンに小さくカットした蛍光パイプを数多くセットしたものです。蛍光パイプは数色に色分けしていますから、それが水面にあると小さなアタリでも非常に分かりやすいのです。

●エサは現地調達するから経費はゼロ

撮影:筆者
カニの甲羅は硬く、こんな硬いものを食べるのか心配になりますが、ご心配なく。クロダイのアゴは非常に強く、イガイも殻ごと食べてしまいます。

ヘチ釣りで使うエサはカニ、イガイ、フジツボ、エビなどです。堤防の壁を伝って落ちていくエサを演出するのだから、そこにいてもおかしくはないエサを使用するのです。

ここでもう一度、エサを見てください。エビを別にすれば、カニ、イガイ、フジツボはすべて釣り場で手に入ります。イガイやフジツボは動きませんから簡単に採取できます。カニは大きな石を持ち上げると大抵2、3匹はすぐ捕まえることができます。干潮前後という条件が欠かせず、干満の時間帯によっては前日にエサの準備しなければならない場合もあるでしょう。しかし、経費がかからないというのは大きな魅力です。ウキ釣りではサシエに加えてコマセが必要ですから、その場合と比較すると大きな差があります。

イガイやカニというエサにはもうひとつ大きな特徴があります。どちらも硬く、エサ盗りに強いという点です。
ヘチ釣りは一年中可能ですが、ハイシーズンは夏場です。夏のクロダイはエサの多い河口や漁港の周囲に散らばり、活発にエサを追っています。ビギナーでも釣りやすい時期なのですが、エサ盗りが多い時期でもあります。水温が高いとほとんどの魚は元気よくエサを追いますから、オキアミなどの軟らかいエサはすぐ食べられてしまいます。イガイ、カニが強みを発揮する理由です。

●堤防の上を歩き回る釣り

ヘチ釣りではサシエを堤防の壁に沿って落としますが、アタリがなければ5mほど移動して、またそこでサシエを落とします。それでもアタリがなければまた移動します。
このように、ヘチ釣りでは堤防の上を延々と移動します。ウキ釣りではコマセでクロダイを寄せますが、ヘチ釣りではクロダイのいるところを求めて釣り人が歩き回るのです。

そのため、必要なものはすべて身につける必要があります。取り込むのに玉網は必需品ですから、ベルトを使って肩に背負います。サシエもなくてはならず、やはり身につけたままで移動します。一日釣りをすると移動距離はかなりのものになりますから、足元は歩きやすいスニーカーで固めておきます。また、暑いころですからハーフパンツを着用するというのが平均的なヘチ釣りスタイルです。

●まとめ

潮間帯は海面のすぐ下です。そんな浅場を探っていて40㎝クラスのクロダイがヒットすると、それはすごい迫力です。足元を釣るには短い竿の方が有利で、その短い竿でクロダイとやり取りするのですから強い引きがビンビン伝わってきます。

ウキ釣りの魅力はウキが沈む瞬間にあるといいますが、ヘチ釣りの魅力はこの迫力にあるといってもいいでしょう。みなさんもぜひ体験してみてくだい。

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